事務所兼倉庫の建築費用は、倉庫部分と事務所部分で坪単価が分かれます。倉庫は構造体が主で内装が少なく、事務所は空調・電気・内装が入るぶん、同じ面積でも工事費が上がるためです。
愛知県内でシステム建築を扱う会社のうち、坪単価を公表しているのは当サイト調べで3社。坪単価12万円〜、14.7万円〜、規模別20.6万〜39.1万円と公表されています(2026年8月31日確認)。ただしこれは倉庫・工場の標準仕様の数字で、事務所を併設すると別の積み上げが必要です。
この記事では、事務所部分で費用が上がる理由、1棟にまとめるか棟を分けるかの判断、システム建築で事務所を含める場合の考え方、そして用途で分かれる法定耐用年数までを整理します。
目次
事務所兼倉庫の建築費用は坪単価で見る
事務所兼倉庫とは、荷物を保管する倉庫と、事務や商談を行う事務所を同じ敷地に建てる建物です。費用を見るときは、延べ床の坪単価をひとつの数字で捉えず、倉庫部分と事務所部分に分けて積み上げます。
起点になるのは倉庫・工場側の坪単価です。当サイトが掲載している愛知県対応の会社のうち、公式サイトまたは会社案内で坪単価を確認できたのは3社でした。
| 会社 | 公表している坪単価 | 備考 |
|---|---|---|
| 丸昇彦坂建設(豊橋市) | 坪単価12万円〜 | yess建築。工期は約20%短縮と併記 |
| 野田建設・コスパ建築(名古屋支店ほか) | 坪単価14.7万円〜 | 2025年版会社案内の標準仕様価格 |
| ヨネダ(名古屋支店) | 坪単価20.6万〜39.1万円 | 約150坪39.1万円〜、約2,000坪20.6万円〜と規模別に公表 |
※各社の公表値を2026年8月31日に確認しました。いずれも倉庫・工場の標準仕様に対する参考価格で、事務所併設の場合の金額ではありません。含まれる工事範囲は会社ごとに異なります。
ここで分かるのは、同じシステム建築でも規模によって坪単価が約1.9倍動くという点です。ヨネダの公表値は150坪と2,000坪で単価が倍近く違います。小規模なほど坪単価は上がるため、事務所併設で建物が小さくなるほど、坪単価の見え方は高くなります。
坪単価に含まれない工事の範囲は坪単価の記事で整理しています。
事務所部分は倉庫より坪単価が上がる
同じ床面積でも、事務所部分のほうが工事費は高くなります。倉庫が構造体と外皮で成立するのに対し、事務所には人が長時間過ごすための設備が必要になるためです。
| 項目 | 倉庫部分 | 事務所部分 |
|---|---|---|
| 内装 | 仕上げなし、または簡易 | 天井・壁・床の仕上げが必要 |
| 空調 | なし、または部分的 | 執務室・会議室に必要 |
| 電気・照明 | 最低限の照度 | 執務に必要な照度とコンセント数 |
| 給排水 | なしのことが多い | トイレ・給湯室が必要 |
| 断熱 | 保管物の条件による | 執務環境として必要 |
見積もりを取るときは、事務所部分の面積と仕様を先に固めてください。「事務所も少し付ける」という条件のままでは、会社ごとに想定が違う見積もりが出てきて比較になりません。執務人数、会議室の要否、トイレの数を決めるだけで精度が変わります。
倉庫側で断熱や空調が必要になるケースもあります。保管物に温度条件がある場合は冷凍・冷蔵倉庫の記事を確認してください。
事務所兼倉庫は1棟にするか分けるか
事務所と倉庫を1棟に収めるか、棟を分けて建てるかは、面積比と将来の計画で決まります。どちらが安いかは一概には言えません。
| 方式 | 向くケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 1棟にまとめる | 事務所が小規模。人と荷物の動線を近づけたい | 倉庫側の工法に事務所を合わせる必要がある |
| 2階に事務所を載せる | 敷地に余裕がない。倉庫面積を最大化したい | 階段・設備の縦配管が要る。構造の負担が増える |
| 棟を分ける | 事務所が中規模以上。将来どちらかを増築したい | 外構と設備の引き込みが2系統になる |
判断で効くのは将来の増築です。倉庫を後から広げる可能性があるなら、事務所を倉庫の妻側に付けると増築の方向が塞がれます。棟を分けるか、増築する側を空けた配置にしておくと、後の選択肢が残ります。
増築の制度上の扱いは増築の記事で整理しました。
事務所の面積が広いと工法の選択が変わる
事務所部分が広くなるほど、倉庫向けの工法だけでは収まらなくなります。大空間を安く作る工法と、細かく間仕切る建物に向く工法は別のものだからです。
目安として、次のように考えると整理しやすくなります。
- 事務所が延べ床の1割程度——倉庫の工法に合わせて内部に事務所を作り込む形が成立します
- 事務所が2〜3割——倉庫部分と事務所部分で仕様を分け、それぞれに適した仕様で積み上げます
- 事務所が半分近い——倉庫向けの工法にこだわる理由が薄れます。棟を分ける検討に入ります
※面積比の目安は、工事範囲の考え方を整理するための当サイトの区分です。法令上の基準ではありません。
用途地域によっては、建てられる建物の種類そのものに制限があります。計画地の条件は用途地域の記事で確認してください。市街化調整区域の場合は調整区域の記事もあわせてご覧ください。
事務所兼倉庫にシステム建築は使えるか
使えます。倉庫・工場部分をシステム建築で建て、事務所部分をその内部または隣接して構成する形が一般的です。ただし事務所部分は標準仕様の外になることが多く、そのぶんは別途の積み上げになります。
システム建築は、部材の規格化によって大空間を短工期・低コストで建てる工法です。強みが出るのは柱のない広い空間で、細かく間仕切る事務所ではその利点が働きません。事務所部分を在来工法で作るか、内部に木造やLGSで造作するかは、会社によって進め方が異なります。
見積もりを取るときに確認する点は3つです。事務所部分がシステム建築の標準仕様に含まれるか、含まれない場合はどの工法で作るのか、設備工事(空調・給排水・電気)が見積もりに入っているか。この3つが揃っていないと、会社間で金額を比べられません。
工法そのものの特徴はシステム建築の記事で、鉄骨の構造の選び方は鉄骨倉庫の記事で整理しています。
事務所兼倉庫の建築費用を動かす4要素
総額を動かすのは坪単価そのものより、敷地と要件の条件です。見積もりを比べる前に、自社の条件がどこに当たるかを確認しておきます。
| 要素 | 費用への影響 |
|---|---|
| 地盤の状態 | 軟弱地盤なら地盤改良や杭が必要。数百万円単位で変わる |
| 建物の規模 | 小規模ほど坪単価が上がる。公表値でも150坪と2,000坪で約1.9倍の差 |
| 設備の要件 | 空調・給排水・電気容量。事務所の人数と機器で決まる |
| 外構・造成 | トラックの動線、駐車場、擁壁。敷地の形状で大きく変わる |
見積書を比較するときは、これらが含まれているかを1項目ずつ突き合わせてください。坪単価が安く見える見積もりほど、地盤改良と外構が別途になっていることがあります。
補助金を使える場合もあります。愛知県内の制度と申請時期は補助金の記事にまとめました。建築確認申請の要否は確認申請の記事で確認してください。
事務所兼倉庫の計画で先に決める5条件
見積もりの精度は、依頼する前にどこまで条件を決めたかで決まります。決まっていない項目は、各社が自社の想定で埋めるため、出てきた金額を横に並べても比較になりません。
先に決めておく条件を5つに絞ります。
| 決める条件 | 決め方 | 費用への効き方 |
|---|---|---|
| 倉庫の天井高(有効高さ) | 保管するラックの段数、フォークリフトのマストの高さから決める | 柱と梁の断面、外壁の面積が変わる |
| 床の荷重条件 | 保管物の重量とフォークリフトの走行を想定する | 土間コンクリートの厚みと配筋が変わる |
| 開口部の位置と大きさ | トラックの接車位置。プラットホームの要否 | シャッターの仕様と構造の補強が変わる |
| 事務所の執務人数 | 現在の人数ではなく、数年後の想定で置く | 面積、空調、トイレの数が変わる |
| 稼働の時間帯 | 夜間の稼働や24時間操業があるか | 照明、空調、防犯設備の仕様が変わる |
この5つのうち、後から変えるコストが最も大きいのは天井高と床の荷重条件です。どちらも構造体に直結するため、建ててから変更することは実質的にできません。いま必要な条件ではなく、その建物を使い続ける年数のあいだに起こりうる条件で決めてください。
逆に、後から追加しやすいのは事務所側の設備です。空調の増設やコンセントの追加は、稼働後でも対応できます。予算が足りないときに削る順序としては、構造に関わらない部分から検討することになります。
倉庫に保管するものによっては、法令上の要件が加わります。危険物を扱う場合は危険物倉庫の記事を、農業用の倉庫は農業用倉庫の記事を確認してください。
事務所兼倉庫の耐用年数は用途で分かれる
減価償却で使う法定耐用年数は、構造と用途の組み合わせで決まります。同じ建物でも、倉庫として使う部分と事務所として使う部分では区分が変わります。
国税庁の耐用年数表では、金属造・工場用・倉庫用のもの(一般用)は骨格材の肉厚によって31年・24年・17年に分かれます(肉厚4mm超で31年、3mm超4mm以下で24年、3mm以下で17年)。事務所用は別の区分が設けられています。
※倉庫用の年数は当サイトが国税庁の耐用年数表で確認した数値です(2026年8月31日確認)。事務所兼倉庫のように用途が混在する建物の区分や按分の考え方は、個別の判断になります。税務処理は顧問税理士にご確認ください。
建物の取得価額が大きいほど、区分の違いが毎年の償却額に効いてきます。設計の段階で骨格材の肉厚を確認しておくと、経理処理で迷いません。計算例は耐用年数の記事に載せています。
愛知で事務所兼倉庫を建てるときの相談先
事務所兼倉庫は、倉庫の工法と事務所の設備という性格の違う工事が同じ建物に入ります。どちらも扱える会社に相談するのが前提になります。
問い合わせの段階で伝えておく項目を挙げます。ここが揃っていると、最初の見積もりから比較できる形で出てきます。
- 倉庫部分の面積と天井高——保管物とフォークリフトの有無で決まります
- 事務所部分の面積と執務人数——会議室・トイレ・給湯室の要否まで
- 計画地の所在と用途地域——建てられる建物の条件が変わります
- 希望する引き渡し時期——工法の選択に影響します
- 将来の増築の可能性——配置計画の前提になります
愛知県内で工場・倉庫の建設に対応している会社は、建設会社の比較ページで対応エリアと工法を並べています。名古屋市内で建てる場合は名古屋市のページもあわせてご覧ください。
計画から引き渡しまでの流れは建設の流れの記事で段階ごとに整理しています。
事務所兼倉庫の建築に関するよくある質問
事務所兼倉庫の坪単価はいくらですか?
愛知県内で坪単価を公表しているのは当サイト調べで3社で、丸昇彦坂建設が12万円〜、野田建設・コスパ建築が14.7万円〜、ヨネダが規模別に20.6万〜39.1万円と公表しています(2026年8月31日確認)。いずれも倉庫・工場の標準仕様に対する数値で、事務所部分は別に積み上げが必要です。
事務所と倉庫は1棟にまとめたほうが安いですか?
一概には言えません。1棟にすると外構や設備の引き込みが1系統で済みますが、倉庫側の工法に事務所を合わせる制約が生まれます。事務所が延べ床の半分近くになる場合や、将来どちらかを増築する予定がある場合は、棟を分ける選択も検討します。
事務所部分だけ坪単価が高くなるのはなぜですか?
内装の仕上げ、空調、照明とコンセント、給排水、断熱が必要になるためです。倉庫が構造体と外皮で成立するのに対し、事務所は人が長時間過ごす環境を作ることになります。見積もりの精度を上げるには、執務人数と会議室・トイレの要否を先に決めてください。
システム建築で事務所も建てられますか?
倉庫・工場部分をシステム建築で建て、事務所を内部または隣接して構成する形が一般的です。ただし事務所部分は標準仕様の外になることが多く、別途の積み上げになります。見積もりでは、事務所部分がどの工法で作られ、設備工事が含まれているかを確認してください。
事務所兼倉庫の法定耐用年数は何年ですか?
構造と用途の組み合わせで決まります。国税庁の耐用年数表では、金属造・工場用・倉庫用(一般用)は骨格材の肉厚により31年・24年・17年に分かれます(2026年8月31日確認)。事務所用は別の区分があり、用途が混在する建物の扱いは個別の判断になるため、顧問税理士にご確認ください。
見積もりを比べるときに何を揃えればよいですか?
倉庫部分と事務所部分の面積、事務所の仕様(空調・給排水・電気)、地盤改良の要否、外構の範囲の4つです。坪単価が安く見える見積もりほど、地盤改良と外構が別途になっていることがあります。同じ条件を書面で渡して、2〜3社から取ってください。
この記事を書いた人
執筆・編集:愛知システム建築ナビ 編集部
愛知県で工場・倉庫をシステム建築で建てるための実務情報と、県内で対応する建設会社の情報をまとめています。工法や坪単価の目安は各社・各メーカーの公表資料、会社の情報は各社の公表情報をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月2日
