倉庫の法定耐用年数は、鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超)が31年、鉄筋コンクリート造が38年、木造が15年です。工場用も同じ区分で、国が定める耐用年数表の「構造×用途」で決まります。建物の取得費はこの年数で分割し、毎年の経費(減価償却費)として計上していきます。
ただし、この数字をそのまま使えないケースが2つあります。鉄骨造は骨格材の肉厚が薄いと24年・17年に短くなり、冷蔵倉庫は同じ構造でも別の短い年数が定められているからです。また、中古で取得した倉庫は法定の年数ではなく「簡便法」で見積もった年数を使うことができます。
この記事では、耐用年数の一次情報である「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第一と国税庁のタックスアンサーにもとづいて、構造別の年数一覧、定額法での償却計算例、中古取得時の簡便法、そして「建てるか借りるか」を検討するときの税務上の目の付けどころまでを整理します。
目次
倉庫の耐用年数は国税庁の表で決まる
法定耐用年数とは、減価償却費を計算するときに使う年数として、財務省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)の別表で資産の種類ごとに定められたものです。建物は「構造」と「用途」の組み合わせで年数が決まり、国税庁のタックスアンサーや確定申告書等作成コーナーでも同じ表が公開されています。
ここで押さえておきたいのは、耐用年数は「建物が物理的に使える年数」ではなく、税務上の費用配分のための年数だという点です。耐用年数31年の鉄骨倉庫が31年で使えなくなるわけではありませんし、逆に年数が残っていても実際の劣化が早ければ修繕は必要になります。建物の寿命と税務の年数は分けて考えてください。
そのうえで、「倉庫の耐用年数は何年か」という問いへの答えは1つではありません。次の4つの条件で変わるためです。
- 構造——鉄筋コンクリート造か、鉄骨造か、木造か
- 鉄骨の肉厚——鉄骨造(金属造)は骨格材の肉厚でさらに3区分される
- 冷蔵倉庫かどうか——同じ構造でも冷蔵倉庫用は短い年数が定められている
- 倉庫業(営業倉庫)かどうか——他社の荷物を預かる倉庫事業用は別の年数になる
以下、この順番で数字を確認していきます。
構造別一覧・倉庫と工場の耐用年数
まず基本となる「一般用」の耐用年数です。耐用年数表では工場と倉庫は「工場(作業場を含む。)用又は倉庫用のもの」という同じ区分にまとめられており、工場の耐用年数も倉庫と同じ年数が適用されます。
| 構造 | 工場用・倉庫用(一般用) | 参考:事務所用 |
|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 38年 | 50年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 34年 | 41年 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 31年 | 38年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 24年 | 30年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 17年 | 22年 |
| 木造・合成樹脂造 | 15年 | 24年 |
※出典=減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一(e-Gov法令検索・2026年8月31日確認)。腐食性の液体・気体の影響を受けるもの、著しい蒸気の影響を受けるものなどは同じ構造でも短い年数が定められています。
同じ建物でも用途によって年数が違うことも読み取れます。たとえば鉄骨造(4mm超)は倉庫用31年に対して事務所用38年です。倉庫や工場に事務所を併設する場合、規模や区分のしかたによって適用する年数の判定が変わることがあるため、境界のケースは税理士・所轄税務署に確認してください。表にない構造では、木骨モルタル造の工場用・倉庫用が14年、簡易建物(木製主要柱10cm角以下でトタンぶき等のもの)が10年と定められています。
なお、この表は税務上の償却期間であって、固定資産税の評価や融資の担保評価はまた別の物差しで行われます。「耐用年数が過ぎた建物は無価値」ということではありません。
鉄骨造の倉庫は骨格材の肉厚で3区分
工場・倉庫で最も多い鉄骨造(耐用年数表では「金属造」)は、柱や梁に使う骨格材の肉厚で年数が3つに分かれます。4mm超なら31年、3mm超4mm以下なら24年、3mm以下なら17年です。鉄骨造の倉庫の耐用年数を調べるときは、まず自社の建物がどの区分かを確認する必要があります。
一般に、大スパンの工場・倉庫で使われる重量鉄骨は4mm超の区分に、小規模な倉庫や車庫で使われる軽量鉄骨は3mm以下の区分に該当することが多くなります。ただし区分はあくまで骨格材の実際の肉厚で判定するものなので、次の書類で確認してください。
- 設計図書・構造図——柱・梁の部材リストに鋼材の断面寸法と板厚が記載されます
- 見積書・請負契約書——鉄骨の仕様欄で確認できる場合があります
- 建築確認申請の副本——構造計算書に主要部材の仕様が載っています
これから建てる場合は、契約前に建設会社へ「骨格材の肉厚が何mmになるか」を確認しておくと、竣工後の資産計上がスムーズになります。肉厚は税務のために決めるものではなく構造計算で決まるものですが、同じ「鉄骨の倉庫」でも償却期間が17年と31年では毎年の経費が大きく違うため、事業計画の収支に先に織り込んでおく価値があります。
冷蔵倉庫用と倉庫業の倉庫は年数が短い
同じ構造でも、冷蔵倉庫用の建物と、倉庫業(営業倉庫)に使う建物には別の年数が定められています。低温環境や結露は建物の傷みを早めるため、一般用より短い年数になっています。
| 区分 | 金属造(肉厚4mm超) | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|
| 一般用の倉庫(その他のもの) | 31年 | 38年 |
| 冷蔵倉庫用(自家用) | 20年 | 24年 |
| 倉庫事業の倉庫用(その他) | 26年 | 31年 |
| 倉庫事業の倉庫用(冷蔵倉庫用) | 19年 | 21年 |
※出典=減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一(e-Gov法令検索・2026年8月31日確認)。金属造3mm超4mm以下の冷蔵倉庫用は15年、3mm以下の冷蔵倉庫用は12年です。
「倉庫事業の倉庫用」とは、倉庫業法の登録を受けて他社の荷物を預かる営業倉庫のことです。自社の製品・材料だけを保管する自家用倉庫はここに含まれず、一般用の年数を使います。同じ建物でも、使い方によって適用区分が変わる点に注意してください。自家用として使ってきた倉庫を営業倉庫に転用するような場合は、償却期間の扱いを税理士に確認したうえで切り替えるのが安全です。
冷蔵倉庫は年数が短いぶん単年の償却費が大きくなりますが、そもそも建設費自体が常温の倉庫より大幅に高くなります。冷凍・冷蔵倉庫の建設費の相場とコスト構造は冷凍倉庫の建設費用で詳しく整理しています。
倉庫の減価償却は定額法で計算する
平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法(旧定額法を含む)のみと定められており、定率法は選べません(国税庁タックスアンサーNo.2100)。定額法の償却限度額は「取得価額×定額法の償却率」で、償却率は耐用年数省令の別表第八に定められています。
建物1億円・耐用年数31年なら年330万円
主な耐用年数の定額法償却率と、建物の取得価額を1億円とした場合の年間償却費を並べます。
| 耐用年数 | 定額法償却率 | 取得価額1億円の年間償却費 |
|---|---|---|
| 15年(木造の倉庫) | 0.067 | 670万円 |
| 17年(金属造3mm以下) | 0.059 | 590万円 |
| 24年(金属造3mm超4mm以下) | 0.042 | 420万円 |
| 31年(金属造4mm超) | 0.033 | 330万円 |
| 38年(鉄筋コンクリート造) | 0.027 | 270万円 |
※償却率の出典=減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第八(平成19年4月1日以後取得・2026年8月31日確認)。年間償却費は取得価額1億円×償却率の単純計算です。
たとえば骨格材の肉厚4mm超の鉄骨造倉庫を建物価格1億円で建てた場合、毎年330万円ずつ、31年かけて経費化していく計算です。事業年度の途中で使い始めた初年度は、事業の用に供した月からの月割りになります。3月決算の会社が10月に倉庫を使い始めたなら、初年度の償却限度額は330万円×6か月/12か月=165万円です。竣工日ではなく「事業の用に供した日」が起点になるため、引き渡しから稼働開始まで間が空く場合は注意してください。
なお、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産は、償却可能限度額と残存価額の仕組みが廃止され、耐用年数の経過時に帳簿上1円(備忘価額)まで償却できます(国税庁No.5410・2026年8月31日確認)。31年かけて取得価額のほぼ全額が経費化される、と考えて差し支えありません。
注意したいのは、土地は減価償却しないことと、建設にかかった総額がすべて建物になるわけではないことです。総額のうち建物・建物附属設備・構築物(舗装や門扉など)・機械装置は別々の資産として計上し、それぞれの耐用年数で償却します。この区分は後述します。
中古倉庫の耐用年数は簡便法で見積もる
中古の倉庫・工場を取得した場合は、法定耐用年数ではなく「その資産をあと何年使えるか」の見積年数で償却できます。見積もりが難しい場合は、次の簡便法で計算した年数を使えます(国税庁タックスアンサーNo.5404)。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産——法定耐用年数×20%
- 一部を経過した資産——(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
計算結果に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。
法定31年・築10年の鉄骨倉庫なら23年
骨格材の肉厚4mm超の鉄骨造倉庫(法定31年)を、新築から10年経過した時点で取得したケースで計算します。
(31年−10年)+10年×20%=21年+2年=23年
同じ倉庫を法定耐用年数の31年をすべて経過してから取得した場合は、31年×20%=6.2年→端数切り捨てで6年です。国税庁は法定30年・経過10年の例で22年という計算例を示しています(2026年8月31日確認)。
ただし、簡便法には使えない場合があります。取得後に事業で使うための資本的支出(改修費など)がその中古資産の取得価額の50%を超えると簡便法は使えず、再取得価額(同じものを新品で買う場合の価額)の50%を超えると法定耐用年数によることになります。また、耐用年数の算定は事業の用に供した事業年度でしか行えず、その年度に算定しなかった場合、後の年度からさかのぼって短い年数に変えることはできません。中古倉庫を買って大規模改修する計画では、契約前に税理士へ確認してください。
建物附属設備と倉庫業用設備の償却期間
倉庫・工場の建設費のうち、電気設備や給排水設備などは建物本体と分けて「建物附属設備」として計上し、建物より短い償却期間で経費化します。主なものの年数は次のとおりです。
| 資産の区分 | 細目 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
| その他のもの | 15年 | |
| 給排水・衛生設備、ガス設備 | — | 15年 |
| 冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下) | 13年 |
| その他のもの | 15年 | |
| 倉庫業用設備(機械及び装置) | — | 12年 |
※出典=減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一(建物附属設備)・別表第二(機械及び装置)(e-Gov法令検索・2026年8月31日確認)。
この区分が実務で効くのは、償却期間の短い設備を建物に含めて計上すると、経費化がその分遅くなるからです。建物31年と電気設備15年では、同じ金額でも毎年の償却費が約2倍違います。なお、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物の償却方法は定額法です。
敷地側の工事も同様です。トラック動線の構内舗装は建物ではなく「構築物」で、舗装道路・舗装路面の耐用年数はコンクリート敷・ブロック敷等が15年、アスファルト敷が10年です(別表第一・2026年8月31日確認)。工場・倉庫の建設では外構・舗装だけで数百万円規模になることがあり、これを建物31年に含めるか構築物10〜15年で計上するかで、償却のペースは変わります。
そのためには、建設会社の見積書・請負契約書の内訳が「建物一式」ではなく、電気設備工事・給排水衛生設備工事などの工事種別ごとに分かれていることが前提になります。竣工後に按分し直すより、見積もりの段階で内訳を工事種別ごとに分けて出してもらうほうが確実です。経理・総務の担当者は、発注前にこの点を建設会社へ伝えておいてください。
倉庫を建てるか借りるかの判断材料
耐用年数と減価償却の仕組みを踏まえると、「建てるか借りるか」は次のように整理できます。倉庫の償却期間(鉄骨造4mm超で31年)は長く、建てた場合の取得費はゆっくりとしか経費になりません。一方、賃借した場合の賃料は支払った期間の経費(損金)になります。
| 項目 | 自社で建てる | 賃借する |
|---|---|---|
| 費用の経費化 | 取得費を耐用年数(鉄骨造4mm超なら31年)で配分 | 賃料をその期間の経費として計上 |
| 継続コスト | 固定資産税・保険料・修繕費を自社負担 | 賃料に含まれる(修繕区分は契約による) |
| 仕様の自由度 | 天井高・床荷重・温度帯を自社仕様にできる | 既存建物の仕様に合わせる |
| やめるとき | 売却・転用・除却の判断が要る | 契約に沿って退去できる |
減価償却は「経費にならない」のではなく「長期に配分される」だけなので、税負担の総額だけで優劣は決まりません。実務では次の順で考えると判断しやすくなります。
- 使用期間の見込み——10年以上その拠点を使う見込みがあるか。短期なら賃借が合理的です
- 仕様の特殊性——大スパン・重量物・低温など、賃貸市場にない仕様が要るなら建てる理由になります
- 資金とキャッシュフロー——建てる場合は支出が先行し、経費化が後追いになるズレを資金計画に織り込みます
建てる場合の費用感は、当サイト掲載社の公表値では坪単価12万円台〜39万円台(本体中心・規模と範囲で変動)です。詳しくはシステム建築の坪単価と費用の内訳を参照してください。愛知県内で工場・倉庫のシステム建築に対応する会社は建設会社の比較で整理しています。概算見積もりに骨格材の肉厚と工事内訳の明示を依頼するところから始めると、税務まで一貫した検討ができます。
倉庫・工場の耐用年数に関するよくある質問
鉄骨造の倉庫の耐用年数は何年ですか?
骨格材の肉厚で決まります。一般用の倉庫・工場では、肉厚4mm超が31年、3mm超4mm以下が24年、3mm以下が17年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一・2026年8月31日確認)。肉厚は設計図書の部材リストや構造計算書で確認できます。冷蔵倉庫用や倉庫業(営業倉庫)用は同じ構造でも短い年数になります。
倉庫と工場で耐用年数は違いますか?
違いません。耐用年数表では「工場(作業場を含む。)用又は倉庫用のもの」という同じ区分にまとめられており、鉄筋コンクリート造38年・金属造(肉厚4mm超)31年・木造15年などが共通で適用されます。ただし事務所部分は別の年数(鉄骨造4mm超で38年など)であり、腐食性ガスの影響を受ける工場などは短い年数が定められています。
中古で取得した倉庫の耐用年数はどう計算しますか?
使用可能期間を見積もるのが原則ですが、困難な場合は簡便法を使えます。法定耐用年数の一部を経過した資産は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」、全部経過なら「法定耐用年数×20%」で、1年未満切り捨て・2年未満は2年です。法定31年・築10年なら23年になります。資本的支出が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えません(国税庁No.5404)。
倉庫の減価償却費は年いくらになりますか?
建物部分の取得価額に定額法の償却率を掛けて計算します。建物1億円なら、鉄骨造(肉厚4mm超・31年)は償却率0.033で年330万円、鉄筋コンクリート造(38年)は0.027で年270万円です。電気設備15年・冷暖房設備13年など建物附属設備は別資産として短い期間で償却するため、見積書の内訳を工事種別ごとに分けておくことが重要です。
この記事を書いた人
執筆・編集:愛知システム建築ナビ 編集部
愛知県で工場・倉庫をシステム建築で建てるための実務情報と、県内で対応する建設会社の情報をまとめています。工法や坪単価の目安は各社・各メーカーの公表資料、会社の情報は各社の公表情報をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月2日
