冷凍倉庫の建設費用は坪単価100〜150万円程度、冷蔵倉庫は80〜120万円程度が目安として公表されており、同規模の常温倉庫の1.5〜2倍程度になるとされています。低温を保つための冷凍機と断熱パネル、防熱扉、床の凍上対策など、常温の倉庫にはない設備が積み上がるためです。
ただし、この幅は大きく動きます。庫内を何度に保つか(温度帯)で断熱材の厚みと冷凍機の能力が変わり、搬送設備を組み込んだ自動倉庫型では坪150〜250万円という公表値もあります。つまり冷凍・冷蔵倉庫は、面積より先に「温度帯と使い方」を決めないと見積もりが成立しない建物です。
この記事では、公表されている坪単価の実額、費用を押し上げる設備の構造、F級・C級という温度帯の区分、倉庫業法上の冷蔵倉庫の扱い、そして使える補助金までを、国土交通省・環境省の公表資料と建設会社の公表値にもとづいて整理します。
目次
冷凍倉庫の建設費用の公表値を並べる
冷凍・冷蔵倉庫の建設費用は「一式いくら」で提示されることが多く、公表されている目安は多くありません。確認できた公表値を並べます。
| 公表主体 | 公表値 | 備考 |
|---|---|---|
| 北王GROUP | 冷蔵倉庫(0〜10℃)坪80〜120万円/冷凍倉庫(−20℃程度)坪100〜150万円/自動倉庫型冷凍冷蔵倉庫 坪150〜250万円 | 規模別の概算も公表(下記) |
| X NETWORK | 冷凍倉庫 坪80〜150万円程度 | 常温倉庫と比べて1.5〜2倍程度になるのが一般的と併記 |
| コスパ建築(野田建設・当サイト掲載社) | 冷蔵倉庫 坪80〜150万円程度 | 総費用は数千万円〜数億円以上と併記 |
※2026年8月31日に各社公式サイトで確認した公表値。建物の規模・温度帯・仕様・含まれる工事範囲により変動します。3社の数値は前提条件が同一ではないため、横に並べて安い順に判断することはできません。
規模の当たりをつける材料として、北王GROUPは規模別の概算も公表しています。約100坪で約8,000万〜1.5億円、約300坪で約3億〜5億円、約1,000坪以上で約10億円以上という水準です(2026年8月31日確認)。
いずれの公表値も幅が大きいのは、冷凍・冷蔵倉庫の費用が「面積」ではなく「温度帯×設備構成」でほぼ決まるためです。同じ300坪でも、10℃以下の冷蔵と−25℃の冷凍では、断熱材の厚みも冷凍機の能力もまったく違います。以降で、この構造を分解していきます。
冷凍冷蔵倉庫の坪単価と一般倉庫の差
常温の一般倉庫と比べると、冷凍冷蔵倉庫の坪単価の水準差がわかります。当サイト掲載社のヨネダは、システム建築による一般の工場・倉庫の参考価格を坪20.6万〜39.1万円(約2,000坪〜約150坪・本体工事中心)と公表しています。冷蔵倉庫の建設費用の公表値80〜120万円、冷凍倉庫の100〜150万円は、この数倍の水準です。
| 建物の種類 | 公表されている坪単価 | 金額に含まれる主な範囲 |
|---|---|---|
| 一般倉庫(システム建築) | 20.6万〜39.1万円(ヨネダ・規模別) | 建物本体・共通仮設・設計費など。冷凍設備は含まない |
| 冷蔵倉庫(0〜10℃) | 80〜120万円(北王GROUP) | 断熱・冷凍設備を含む水準として公表 |
| 冷凍倉庫(−20℃程度) | 100〜150万円(北王GROUP) | 同上。温度帯が低いぶん冷蔵より高い |
| 自動倉庫型冷凍冷蔵倉庫 | 150〜250万円(北王GROUP) | 搬送・自動化設備を含む水準として公表 |
※2026年8月31日確認。一般倉庫の坪単価は建物本体中心、冷凍・冷蔵倉庫の坪単価は設備を含む水準として公表されており、数えている範囲が違うため倍率の単純計算はできません。
それでも実務上の結論は変わりません。冷凍・冷蔵倉庫は、設備まで含めた総額で一般倉庫の数倍の投資になるということです。だからこそ、保管する物品のうち本当に低温が必要な部分はどれだけか、常温区画と低温区画をどう分けるかという設計段階の検討が、坪単価の交渉より先に効いてきます。倉庫全体を冷やすのではなく、低温区画を必要最小限に絞る計画が総額を最も大きく動かします。
建設費用の中心は冷凍機と断熱パネル
常温倉庫との価格差はどこから生まれるのか。費用を押し上げる主な設備・工事は次の5つです。
- 断熱パネル——庫内を断熱材のパネルで囲って低温室を作ります。設定温度が低いほど厚いパネルが必要になり、材料費と施工費が増えます
- 冷凍機(冷却設備)——庫内温度と外気温の差が大きいほど、また出入りの頻度が高いほど、大きな冷却能力が要ります
- 防熱扉——出入口には断熱性能を持つ専用扉が必要です。フォークリフトの動線ごとに設けるため、枚数分の費用がかかります
- 床の防熱・凍上対策——冷凍倉庫では床下の地盤が凍って床を持ち上げる凍上(とうじょう)を防ぐため、床の断熱や床下の対策工事が必要になります
- 電気設備——冷凍機を動かす動力電源の容量が常温倉庫より大きくなり、受変電設備の規模に跳ね返ります
もう1つ見落とされやすいのが、建物と設備で更新の周期が違うことです。建物本体が数十年使えるのに対し、冷凍機などの設備は先に更新時期が来ます。税務上も、営業倉庫の機械装置である倉庫業用設備の耐用年数は12年と、建物よりずっと短く定められています(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第二・2026年8月31日確認)。
したがって見積もりを取るときは、建築工事・冷凍設備工事・電気設備工事の内訳を分けて出してもらい、更新が先に来る設備部分がいくらかを初期費用と分けて把握しておくことが、長期の投資判断につながります。運転後の電気代も含め、初期費用だけで比較しないことが大切です。
F級・C級の温度帯区分で費用が変わる
冷蔵倉庫の温度帯には業界共通の等級があり、C級(チルド・冷蔵)とF級(フローズン・冷凍)と呼ばれます。従来の区分は次の7つです。
| 等級 | 温度帯 | 呼び方 |
|---|---|---|
| C3級 | −2℃超〜+10℃以下 | 冷蔵倉庫(クーラー級) |
| C2級 | −10℃超〜−2℃以下 | |
| C1級 | −20℃超〜−10℃以下 | |
| F1級 | −30℃超〜−20℃以下 | 冷凍倉庫(フリーザー級) |
| F2級 | −40℃超〜−30℃以下 | |
| F3級 | −50℃超〜−40℃以下 | |
| F4級 | −50℃以下 |
※従来の温度帯区分。出典=三和建設「倉庫業法施行規則の温度区分細分化に関する改正について」(2026年8月31日確認)。一般に「冷凍倉庫」と呼ばれるのはF級(−20℃以下)の倉庫です。
この区分は2023年12月28日公布・2024年4月1日施行の告示改正で見直され、区分が細分化されました。国土交通省は、冷凍食品の保管量の増加や電力料金の高騰を背景に、過冷凍による品質劣化の防止と保管料高騰の抑制、環境負荷の低減を目的として、−10℃超〜−40℃以下で10℃刻みだった冷蔵室の温度設定を5〜8℃刻みに変更し、連続する2つの温度帯の設定も可能にしたと公表しています(2026年8月31日確認)。
発注者にとっての意味は明確です。等級を1段下げる(より低温にする)ごとに、断熱も冷凍機も電気代も一段高くなるため、保管する物品に必要な温度帯を先に確定させることが、最初の、そして最大のコスト決定になります。取引先から預かる荷物の温度指定が何度なのかを、設計前に書面で確認してください。
冷蔵倉庫は倉庫業法でどう扱われるか
他社の荷物を預かって保管料を得る「営業倉庫」を営むには、倉庫業法にもとづく国土交通大臣の登録が必要です。倉庫業法は倉庫業を「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」と定義しており、自社の製品・原材料だけを保管する自家用倉庫であれば登録は不要です(e-Gov法令検索・2026年8月31日確認)。
営業倉庫にはいくつかの種類があり、冷蔵倉庫はそのうちの独立した1類型です。倉庫業法施行規則では、冷蔵倉庫について次のように定められています。
- 保管する物品——農畜水産物の生鮮品・凍結品等の加工品など、10℃以下での保管が適当な物品(第八類物品)
- 施設設備基準——冷蔵室の保管温度が常時10℃以下に保たれるものとして国土交通大臣の定める基準を満たすこと
- 温度計——見やすい場所に冷蔵室の温度を表示する温度計が設けられていること
ここで大事なのは発注時の順序です。将来、営業倉庫として登録する可能性が少しでもあるなら、設計段階から登録基準を前提にしておく必要があります。竣工後に基準へ合わせて改修するのは、初めから織り込むより高くつきます。3PL事業への展開や他社荷物の受託を考えているなら、建設会社への最初の要件提示に「営業倉庫(冷蔵倉庫)としての登録予定の有無」を必ず含めてください。
なお、冷蔵倉庫は税務上の耐用年数も一般倉庫より短く、鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超)で20年、倉庫業に使う場合は19年です(一般倉庫は31年)。償却計算の仕組みは倉庫の耐用年数と減価償却で詳しく解説しています。
自然冷媒への補助金と活用できる制度
冷凍・冷蔵倉庫には、常温の倉庫にはない補助制度があります。環境省の「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」で、冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場・食品小売店舗を対象に、フロン類ではなくCO2やアンモニアなどの自然冷媒を使う省エネ型機器の導入費用の一部が補助されます。補助率は原則3分の1で、要件を満たす中小企業では2分の1となる区分も公表されています(環境省・2026年8月31日確認)。
公募は年度ごとに行われ、要件・スケジュールは毎年見直されます。冷凍機は建設費の中でも大きな割合を占める設備なので、機器選定の段階で自然冷媒機器を候補に入れ、公募時期と工事スケジュールを合わせられるかを建設会社・設備業者に確認する価値があります。電力料金が高止まりするなか、省エネ性能はランニングコストにも直結します。
これとは別に、愛知県と県内各市には工場・倉庫の新増設を対象にした立地補助金・奨励金があります。冷凍冷蔵倉庫を含む物流施設が対象になる制度もありますが、主要な制度はいずれも工事着工の30日前までの申請が必要です。制度の一覧と申請の順序は工場建設の補助金と着工30日前の壁にまとめています。
冷蔵倉庫の建築を依頼する会社の選び方
冷凍・冷蔵倉庫の建築は、建物(建築工事)と冷凍設備(設備工事)の2つの専門領域にまたがります。発注前に固めておくべきことと、会社を選ぶときの確認点を整理します。
| 確認点 | 見るポイント |
|---|---|
| 1. 温度帯と区画 | C級かF級か、低温区画は全体か一部か。ここが決まらないと概算も出ない |
| 2. 低温倉庫の施工実績 | 冷凍・冷蔵倉庫の実績を温度帯・面積つきで確認できるか |
| 3. 建築と設備の責任区分 | 冷凍設備を建設会社の一括請負に含むか、分離発注か。不具合時の窓口が分かれないか |
| 4. 営業倉庫登録への対応 | 倉庫業登録を予定する場合、登録基準を踏まえた設計・書類作成に対応できるか |
| 5. 更新・メンテナンス | 冷凍機の保守体制と更新周期の説明があるか。電気代の試算を出せるか |
常温区画(荷捌き場・事務所・一般保管)を含む複合的な倉庫であれば、常温部分にシステム建築を使って建物本体のコストを抑え、低温区画に投資を集中させる構成も検討に値します。冷蔵倉庫の建築をどの会社に相談するかは、この「建物と設備の全体を誰がまとめるか」で決まります。
愛知県内で工場・倉庫の建設に対応する会社は愛知の工場・倉庫の建設会社比較で整理しています。掲載社には冷蔵倉庫の費用解説を公開している会社(コスパ建築)もあります。まずは温度帯・面積・営業倉庫化の有無の3点を固めて、2〜3社に同じ条件で概算を依頼するところから始めてください。
冷凍・冷蔵倉庫の建設費用に関するよくある質問
冷凍倉庫の建設費用は坪単価いくらですか?
公表されている目安では、冷凍倉庫(−20℃程度)が坪100〜150万円、冷凍倉庫全般で坪80〜150万円程度とされています(北王GROUP・X NETWORK・2026年8月31日確認)。搬送設備を組み込んだ自動倉庫型は坪150〜250万円という公表値もあります。温度帯・規模・含まれる工事範囲で大きく変わるため、複数社の見積もりで確認してください。
冷蔵倉庫と冷凍倉庫では建設費用がどれくらい違いますか?
公表値では冷蔵倉庫(0〜10℃)が坪80〜120万円、冷凍倉庫(−20℃程度)が坪100〜150万円です(北王GROUP・2026年8月31日確認)。設定温度が低いほど断熱パネルが厚くなり、冷凍機の能力と電気容量も大きくなるためです。床の凍上対策など冷凍特有の工事も加わります。
自社の荷物だけを保管する場合も倉庫業の登録が必要ですか?
不要です。倉庫業法の登録が必要になるのは、寄託を受けた物品の保管を行う営業、つまり他社の荷物を預かって保管料を得る営業倉庫です。ただし将来、営業倉庫(冷蔵倉庫)として使う可能性があるなら、保管温度が常時10℃以下に保たれる施設設備基準などを設計段階から織り込んでおくほうが、後からの改修より安く済みます。
冷凍倉庫の建設に使える補助金はありますか?
環境省の事業で、冷凍冷蔵倉庫を対象に自然冷媒(CO2・アンモニア等)を使う省エネ型機器の導入費用が原則3分の1補助されます(2026年8月31日確認・年度ごとに公募)。また愛知県と県内各市の立地補助金・奨励金の対象になる場合もありますが、主要制度は工事着工の30日前までの申請が必要なため、計画の早い段階で窓口に相談してください。
この記事を書いた人
執筆・編集:愛知システム建築ナビ 編集部
愛知県で工場・倉庫をシステム建築で建てるための実務情報と、県内で対応する建設会社の情報をまとめています。工法や坪単価の目安は各社・各メーカーの公表資料、会社の情報は各社の公表情報をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。
最終更新:2026年9月2日
